液体ヘリウム上の電子

清浄な環境でのスケーラブルな電子スピン量子ビット

液体ヘリウム表面上の電子は、古くから物性物理の研究に用いられてきた系です。液体ヘリウムの表面は非常に一様で清浄であるという特長があり、その結果、物質中の電子と比べて非常に高い移動度を示します。また、多数の電子をほぼ同一の条件で一様に捕捉することが可能です。一方で、液体であるがゆえに、表面が時間的に揺動してしまうという弱点があります。

プラズモンとLC共振器の強結合

3つの同心円状の電極を向かい合わせて配置し、その間は 2 mm でキャパシタンスを形成しています。下部電極を約 1 mm 厚の液体ヘリウムに浸し、その表面に 10\(^8\) 個の電子を浮揚させます。上部電極に超伝導スパイラルインダクタを接続し、損失の少ない LC 共振器を構成しています。

電子同士は完全に独立ではなく、クーロン相互作用を介して互いに影響し合います。その結果として、電子は x, y 方向に集団振動し、それが局在プラズモンという準粒子として現れ、RF 信号に起因する振動電場と結合しています。プラズモン周波数と LC 共振器の共振周波数で反交差を観測しました。

一般にプラズモンは金属ナノ粒子などの物質中でも観測され、応用範囲も非常に広いことが知られています。しかし、物質中の電子系では散乱や損失が大きいため、このようにクリーンな共鳴応答を観測することは一般的には困難です。これに対して、真空中に浮揚する電子は極めてクリーンな物理系であり、損失の小さいプラズモン共鳴を観測でき、シミュレーションとの定量的一致も得られました。

今後の展開

この極めてクリーンな電子系という特長を活かし、理論と直接比較可能な純粋多体系のシミュレーションプラットフォームへと展開することを目指しています。

主な研究テーマ:

  • LC共振器を用いたプラズモンの強結合実験
  • 多体系物理のシミュレーションプラットフォームとしての展開
  • 超伝導スパイラルインダクタによる高感度読み出し

References